鳥獣戯画とは?なぜ面白いのか|日本最古の漫画の3つの見どころ

This article is also available in English: What Is Choju-giga? Japan’s Oldest Manga Explained (Famous Animal Scroll)

鳥獣戯画(正式には鳥獣人物戯画)は、約900年前に描かれた絵巻で、兎(ウサギ)や蛙(カエル)などの動物が人間のように振る舞う姿が特徴です。「日本最古の漫画」として知られ、多くの人に親しまれてきました。一見すると、動物たちが遊んでいるだけのユーモラスな絵に見えますが、当時の人々の暮らしや価値観を高度な手法で表現しているともいわれています。

こうしたユーモアと奥深さをあわせ持つ点が、この作品の大きな魅力です。鳥獣戯画はなぜこれほどまでに面白く、そして興味深いのでしょうか。

この記事では、その魅力を「3つの見どころ」に分けてわかりやすく解説します。

鳥獣戯画 甲巻 兎と猿の水遊びの場面

鳥獣戯画とはどんな作品か

鳥獣戯画は平安時代から鎌倉時代にかけて描かれたとされる、日本を代表する絵巻物です。日本の絵巻物の中でも非常に古い作品のひとつで、その親しみやすさと、芸術性の高さから国宝に指定されています。原本は現在でも京都の高山寺で大切に保存されており、展覧会などの際には東京国立博物館や京都国立博物館などで公開されることがあります。

「甲・乙・丙・丁」の四巻からなり、それぞれ描かれている場面や描写方法が異なります。かつては四巻とも鳥羽僧正覚猷の作とされていましたが、現在では異なる時代に異なる絵師によって制作された可能性が高いと考えられています。作者についてはっきりしたことは分かっていません。

四巻の中で特に有名なのが甲巻です。教科書や展覧会で紹介されることが多く、一般に知られている、多くの人が思い浮かべる鳥獣戯画の場面は甲巻のものです。技術面での評価や人気も群を抜いています。一方、乙巻には動物の姿が写実的に描かれており、丙巻や丁巻には人間の姿を中心にした描写が多くあります。

鳥獣戯画が日本最古の漫画と呼ばれる理由

「最古の漫画」とされるのも主に甲巻です。擬人化された動物たちが相撲を取ったり、走り回ったり、喧嘩をしたりします。ときに儀式のような様子も描かれています。絵巻を横に広げて読み進めていくと、まるでコマ割りのない漫画のように物語が流れていきます。セリフや説明が一切なく、絵だけで物語が展開される表現が、後の漫画につながると評価されています。海外でも「漫画の起源(the origin of manga)」として人気があります。

甲巻の場面を見てみましょう

『兎と蛙の弓大会』
弓の腕比べはとても古くからある遊びです。
「蛙なんかに負けてなるか」と闘志満々の兎たち。
矢を腰に差して勝負を見守る蛙や、身を乗り出して熱心に見入る蛙も描かれています。

鳥獣戯画 甲巻 兎と蛙の弓大会の場面

『宴会』
腕比べが終われば、宴会です。二羽の若い兎が担ぐ長びつの蓋の上には鳥が二羽括られています。
その後ろには重そうな酒瓶を担ぐ蛙と兎。二匹の会話が聞こえてきそうです。

「蛙さん、そんなに急ぐとお酒がこぼれるよ」
「肩が痛くてしんどいよ、兎さん」

そのまた後ろから運ばれてきた長びつは料理が一杯で蓋を閉めることもできません。

鳥獣戯画 甲巻 兎と蛙の宴会の場面

『兎と蛙の大相撲』
こちらは兎と蛙の大相撲。
がっぷり四つに組んだ二匹。
蛙、外掛けをかけましたがうまくかかりません。焦った蛙は兎の耳にがぶり。
「卑怯だぞ! 離せ!!」
兎たちが物言いをつけますが、聞く耳を持ちません。

鳥獣戯画 甲巻 兎と蛙の相撲の場面

このように、甲巻では動物たちの動きだけで物語が生き生きと表現されています。

鳥獣戯画の見どころ

鳥獣戯画の見どころ①|動物で人間社会を描いたユーモアと風刺

鳥獣戯画の大きな魅力の一つは、動物たちが人間のように振る舞うユーモラスな表現です。動物たちが楽しそうに遊ぶ姿は、まるで人間の子どものようで、見ているだけで自然と笑みがこぼれます。

さらに注目されるのは、この絵巻が当時の社会のあり方や、権力関係、儀式などを風刺しているとも考えられる点です。動物の姿を通して人間の営みを描くことで、直接的な表現を避けながらも、人間社会の特徴を、分かりやすく表しているともいえます。

このため、見る人は時代や立場を超えて共感し、ときに自分たちの社会の姿を重ね合わせてしまうのです。

鳥獣戯画の見どころ②|セリフに頼らない表現が生む自由な解釈

鳥獣戯画には、文字による説明が一切ありません。それにもかかわらず、動きや構図だけで場面の流れが自然と伝わってきます。そのため、見る人は直感的に物語を楽しみながら、自由に想像を膨らませることができます。例えば、甲巻の有名な川遊びの場面の兎と猿(下の図の赤丸内)が何をしているのかについても、いろいろな解釈があります。

詳しくは「鳥獣戯画の兎と猿は何をしている?有名な水遊びの場面の3つの解釈」で解説していますので、よろしければあわせてご覧ください。

鳥獣戯画の見どころ③|シンプルな線で生き生きと描く表現技法

鳥獣戯画は、一見すると簡素な線で描かれていますが、その表現には高度な技術が見て取れます。最小限の線で動きや感情を的確に捉え、動物たちのしぐさや関係性を生き生きと表現しています。とくに、軽やかで途切れのない筆使いは、見る者の視線を自然に導き、場面に流れとリズムを生み出しています。

シンプルな描写でありながら、豊かな表現を可能にしている点に、この作品の優れた技術が表れています。鳥獣戯画は日本美術における絵画としての完成度においても高く評価されているのです。

鳥獣戯画の謎

鳥獣戯画には、いくつかの大きな謎が残されています。
描かれた時期や作者がはっきり分かっていないこと、また画風の異なる四巻が一つの作品としてまとめられている理由や経緯など、その全体像はいまだ解明されていません。
さらに、この絵巻が単なる戯画であるならば、なぜ京都の高山寺で、貴重な宗教的資料とともに長く大切に保管されてきたのかも不思議な点です。もしかすると、この絵巻には何らかの宗教的、あるいは思想的な意味が込められているのかもしれません。

こうした謎について「鳥獣戯画の謎とは?絵巻の意味や高山寺との関係について」でも詳しく解説しています。鳥獣戯画の謎は、3つの見どころと相まって、人々を魅了し続けています。

絵本で楽しむ鳥獣戯画

鳥獣戯画を子どもにも親しみやすく紹介した本として、『対訳 鳥獣戯画』があります。甲巻を最初から最後まで通して、お話しとともに楽しめます。英語の対訳付ですので、海外の方へのプレゼントや、日本文化を英語で説明する勉強にも利用されている人気のシリーズです。小学校の教科書にも推薦図書として掲載されています。

言葉のない全長11メートルほどの絵巻から、後の人々は当時の風俗を読み取ったり、場面を想像したりして、さまざまな物語を生み出してきました。本書でもそうした解釈を参考にしながら、お話をつけていますので是非お楽しみください。
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