富士信仰とは?北斎「諸人登山」に見る富士講と富士登山
This article is also available in English: Mount Fuji Worship: Why Japan’s Sacred Mountain Is Revered
富士山は、古くから日本人にとって特別な意味をもつ山でした。人々は富士山を神聖な存在として敬い、信仰の対象として登拝してきました。こうした信仰は長い年月の中で発展し、日本を代表する霊峰として独自の文化を生み出してきました。
富士信仰とは何か
富士信仰とは「身分や貧富の差にかかわらず、全ての人は富士を拝み、登ることで救われる」という信仰です。古代から日本の文化や宗教に根付いており、その発展は大雑把に4段階に分けることができます。
- 古代:日本人は山や自然の霊峰(れいほう)を神聖視し、敬ってきました。山を崇拝する山岳信仰が発達し、飛ぬけた雄大さ、美しさ、神々しさを持つ富士山もその対象となりました。
- 平安時代から鎌倉時代:富士山信仰はより組織的な形を取り始めます。富士山への巡礼や修行が行われるようになり、富士山に登ることが霊的な浄化や成長の手段として見なされるようになったのもこの時期です。
- 江戸時代:北斎をはじめ多くの絵師が富士山の絵を描くようになります。「富士講」と呼ばれる宗教的なグループや団体が形成され、富士信仰は江戸のすみずみまで深く行き渡り、人々は我も我もと富士山に登りました。
- 現在:2013年にUNESCOの世界遺産に登録されるなど、富士山は日本のシンボルとして広く認知され、宗教的な意味合いよりも観光地としての重要性が高まっています。
富士講と富士登山を描いた『諸人登山(しょにんとざん)』
江戸時代になると、富士山を信仰する「富士講」が広まり、多くの人々が信仰として富士登山を行うようになりました。北斎の『諸人登山』はそうした様子を描いた富嶽三十六景の中でも少し特殊で非常に興味深い作品です。北斎がこの作品に描いた絵の中で登頂を果たした人たちから喜びが感じられないのは、富士登山が娯楽ではなく信仰の行為だったからかもしれません。

冨嶽三十六景シリーズ46枚の中で、唯一、富士の山容が描かれていない富士である。危ない足場をはうようにしながら、富士山頂に登山をする、富士講と呼ばれた富士山を信仰する人たちの姿と、岩肌から霧が湧きでる険しい富士山頂の山肌が描かれている。画面上部の岩室にうずくまる人々は暖ととっているのか。富士山頂の登山を果たしたという喜びが感じられないのはどういうわけだろうか。富士山容の美しさで綴られたシリーズの完結として、富士山頂の険しき姿をあえて描いたのであろう。
冨嶽三十六景《諸人登山》 文化遺産オンライン (nii.ac.jp)
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