印象派の名前の由来とは?「印象・日の出」だけではない説を解説
印象派の名前の由来は、モネの『印象・日の出』がきっかけとよく説明されますが、そこには異論もあるようです。この記事では、印象派の名前の由来として一般に語られている定説について、詳しく紹介します。
印象派の名前の由来としてよく知られる定説
一般には、1874年の第1回印象派展を批評したルイ・ルロワが、モネの『印象・日の出』を見て「こんなものは印象に過ぎない。書きかけの壁紙のほうがましだ。」と皮肉を込めて評したことが、「印象派」という名前の由来になったとされています。つまり、「未完成のように見える絵画」を揶揄する言葉として「印象派」という呼び名が生まれ、それがそのまま定着した、という理解です。
ルイ・ルロワの記事では「印象」はどのように使われていたか
この記事は批評家ルイ・ルロワが架空の古典派の巨匠ジョゼフ・ヴァンサンに印象派画家達の一回目の展覧会を案内するという設定になっています。この中で印象派画家達の作品を酷評しているのは架空の巨匠ヴァンサンであり、ルロワは印象派画家達の立場から絵の説明をするという役回りになっています。
つまり、少なくともこの新聞において批評家は印象派を酷評したわけではなく、むしろ印象派に理解を示しているのです。このニュアンスの違いは大きいですね。印象派画家達が好んで「印象派」という言葉を使ったのは反骨精神から来たのだと思っていましたが、もっと素直な反応だったのかもしれません。
ここで、風刺新聞『ル・シャリヴァリ』の書き出しをリンク先から引用します。
「印象派の展覧会」
ああ! それは実に大変な1日だった。私が、風景画家であり、ベルタンの弟子であり、数々の政権の下でメダルや勲章を受けてきたジョゼフ・ヴァンサン氏とともに、キャピュシーヌ大通りの第1回展覧会に思い切って飛び込んだのは! 軽率な彼は、何の警戒心も持たずにそこに来たのだった。彼は、どこでも見られる種類の絵を見られるものと思っていたのだ。良いものや悪いもの、良いというよりは悪いだろうが、それでも善良な芸術的モラル、形態への忠実さ、巨匠への敬意を否定しないものだ。ああ! 形態! ああ! 巨匠! この哀れな老人には、もはやそんなものは必要なくなった! 全て変わってしまったのだ。
一つ目の部屋に入るや、ジョセフ・ヴァンサンは、ギヨマン氏の『踊り子』の前で最初の一撃を受けた。
「何と残念なことか。」と、彼は言った。「この画家は、色彩についてある程度理解をしているのに、もう少しまともな描き方をしないとは。彼の踊り子の足は、スカートの綿と同じくらいふわふわしているじゃないか。」
「あなたは彼に厳しいと思います。」と私は答えた。「むしろ、このデッサンはとてもしっかりしていますよ。」ベルタンの弟子は、私が皮肉を言っているのだと解釈して、返答するのもわずらわしいと、肩をすくめるにとどめた。そこで、私は黙って、できるだけうぶを装って、彼をピサロ氏の『耕された畑』の前に案内した。この驚くべき風景画を見るなり、この好人物は、自分の眼鏡のレンズが汚れていると思ったようだ。彼は丁寧にレンズを拭いてから、鼻の上に戻した。
「ミシャロンにかけて!」と彼は叫んだ。「一体それは何です?」
「ほら……深く掘った畝に霜が降りているところです。」
「それが畝、それが霜? でもこれはキャンバスに一様にパレットの削りかすを並べただけのものでしょう。頭も尻尾もない、上も下もない、前も後ろもない。」
「そうかもしれませんが……しかし印象がありますよ。」
「いかにも、おかしな印象だ! おぉ……それは?」
「シスレー氏の『果樹園』です。右の方にある小さな木はお勧めです。いい加減ではありますが、印象が……」
「もう君の印象というやつから放っておいてくれないか!……出来てもいないし、出来上がる見込みもない。しかしここにはルアール氏の『ムランの眺め』があるね。水面に何かがある。前景の影などは、実に妙だ。」
印象派の展覧会 – Wikisource
「印象派」の名前は『印象・日の出』だけが由来とは言い切れない理由
引用から分かるように、「印象」という言葉はモネの『印象・日の出』の説明に限らず、他の作品について語る場面でも繰り返し使われています。また、記事のタイトル自体も「印象派の展覧会」となっており、「印象」という言葉は特定の一作品だけを指して使われているわけではありません。
つまり、「印象派」という呼び名は単に『印象・日の出』という作品名から生まれたというよりも、当時の批評の中で、これらの新しい絵画に共通する特徴を表す言葉として使われていた可能性があると考えられます。
もちろん、『印象・日の出』がこの名称の広まりに大きな役割を果たしたことは間違いないでしょう。しかし、「印象派」という名前の由来は、1枚の作品だけで説明できるほど単純なものではなく、当時の批評や受け止められ方の中から生まれた言葉として捉える方が実態に近いのかもしれません。
このように原文に当たってみると、一般に知られている定説とは少し異なる側面が見えてきます。固定観念にとらわれず、一次資料から考えることの大切さを改めて感じさせられます。
参考:山田五郎先生の動画
本記事のテーマについては、山田五郎先生のYouTube「オトナの教養講座」でも分かりやすく解説されています。ルイ・ルロワの記事の読み方や「印象派」という言葉の使われ方について理解を深めたい方は、ぜひあわせてご覧ください。
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