筆触分割法と点描画画法の根本的な違い(山田五郎先生のオトナの教養講座)

印象派を象徴する「筆触分割」と新印象派と呼ばれるスーラが生み出した「点描」の違いについて解説している動画です。

「点描」をモネやルノワールが辿り着いた「筆触分画」の進化形に過ぎないと思っていたのですが、この二つは根本的に異なる画法であることを知りました。大変、勉強になりました。

「筆触分割」は絵の具を混ぜず異なる色を小さなタッチで並べて置くようにして表現する技法です。モネとルノワールがセーヌ湖畔の新興行楽地、ラ・グルヌイエールでカンバスを並べて制作した作品「ラ・グルヌイエール」で確立しました。

モネの作品
ルノワールの作品

絵具は混ぜると暗くなる(最終的には黒になる)という性質があるので、色を混ぜずに、隣り合わせに置くことで戸外の光のまばゆさを表現しています。
写真では表現出来ない自然の光の印象をカンバス上に表現するために印象派の巨匠二人が辿り着いた手法です。

光は混ぜれば混ぜるほど明るくなるのに対して、色は暗くなるという矛盾を解決するために生まれた「筆触分割」を更に科学的かつ理論に基づいて進化させたのがスーラ「点描」です。混ぜたい色を画面上に点で並置することによって、網膜上に混合された色彩を作り出すという「視覚混合」に加え、引き立たせたい色の横にその色の補色を配置するという「補色対比」という手法も使っています。

スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」

手法的には筆触分割の進化形と言える思いますが、山田五郎先生はその背景ある根本的な違を指摘します。それゆえにモネやルノワールはスーラの点描を拒絶し、印象派画家の内部分裂、ついには印象派展の終焉にもつながります。
両者の違いは筆触分割が自然の空気感を忠実に再現する手法であるのに対し、点描は自然の色彩を分割して、再構築する手法だという点にあります。スーラの作品からある種の「不自然さ」を感じるのはこのためです。新印象派に対してルノワールは「絵は理屈じゃねぇ」と言い、ゴーギャンは彼らのことを「青二才の科学者」と呼んだそうです。
スーラがやろうとしたことは、あまりに新しかったので巨匠達の理解を超えていたのでしょう。

山田五郎先生はこのことを「セザンヌが形でやろうとしたことをスーラは色でやった」と解説されています。セザンヌが自然を三角や四角に置き換えて再構成したようにスーラは色彩で自然を作り直そうとしたのです。この考え方はフォービズムからキュビズムへとつながっていく20世紀美術にも多大な影響を与えています。31歳で亡くなったスーラですが、美術史上の重要性という意味では「20世紀美術の父」と呼ばれるセザンヌにも負けないという意味が良く理解できました。
スーラの生涯と作品をもう一度じっくり観てみたくなる貴重な動画でした。

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