ゴッホの「ひまわり」にまつわる切ない話(山田五郎先生のオトナの教養講座)

山田五郎先生はゴッホに関して、耳切り事件、自画像の進化、自殺に関する謎など、様々な話題を提供してくださっています。どれも興味深いのですが、やはりゴッホと言えばまずは「ひまわり」でしょう。

ゴッホはひまわりの絵を7枚描いています。現在、我々が鑑賞できる作品が5枚、個人蔵が1枚、戦争で焼失してしまった作品が1枚です。

①アルルでひまわりを見ながら制作した作品
(ロンドンのナショナルギャラリー蔵)
②自分の作品(①)の模写
(ヴァン・ゴッホ美術館)
③自分の作品(①)の模写
(東京のSOMPO美術館蔵)
④アルルでひまわりを見ながら制作した作品
(ノイエ_ピネコテーク蔵)
⑤自分の作品(④)の模写
(フィラデルフィア美術館蔵)

この5枚が現在、鑑賞できる作品です。
背景の色(水色と黄色)で分けることも、元の作品と(①と④)自分の作品の模写(②、③と⑤)に分けることもできます。

アルルでゴッホと共同生活をしたゴーギャンは①のナショナルギャラリーの作品を「ゴッホの代表作だ」と言っています。

③は東京で鑑賞できます。東京にお立ち寄りの際は是非、ご覧ください。

⑤のフィラデルフィア美術館の作品を「ゴッホのひまわりの集大成」とする解説もあります。

⑥ゴッホが初めて制作した「ひまわり」
(個人蔵:アメリカ)
⑦1920年に芦屋の実業家が購入した作品
(第二次世界大戦の空襲で焼失)

この2枚は現在は鑑賞することは出来ません。

⑦は日本が絡んでおり、アメリカとの戦争で焼失してしまったという点でショッキングです。

2枚とも背景が暗く、枯れた「ひまわり」が描かれており、他の5枚のような健康的で明るい印象が伝わってきません。

今回の動画は「どうしてゴッホは同じような絵をこんなに沢山描いているんだろう?」というアシスタントの方の疑問からスタートしています。一つは単純に「ひまわりが好きだったんだろう」ということですが、深堀りすると切ない背景が見えてきます。

ゴッホはパリから移住したアルルで「黄色い家」を借りて芸術家たちと共同生活をして、そこの食堂をひまわりの絵で飾りたいという夢を持っていました。太陽に向かって伸びていくひまわりはゴッホにとって常に理想を追い求める「芸術家の象徴」だったのです。共同生活する芸術家の数だけひまわりの絵を揃える計画だったそうです。キリストの12使徒になぞらえて12人の芸術家を呼ぼうとしていたという説もあります。

そもそも、この夢はゴッホの日本に対する「間違った憧れ」に基づいています。ゴッホは日本を浮世絵のイメージから「光あふれる南国」に違いなく、更に、何故か日本の画家たちは共同生活をしてお互いに絵を贈り合っていると思い込んでいたのです。パリから「ヨーロッパの日本」である南仏のアルルに移り、「日本の画家たちのような」共同生活を送りたいという夢からもゴッホの思い込みの激しさが分かります。

ゴッホはパリの画家たちをアルルでの共同生活に誘ったのですが、誰も来てくれませんでした。思い込みの激しい性格に加えてストーカー気質もあったとのことで、一緒に住むのをしり込みしてしまたのでしょう。
先走ってアルルに家を借り、理想を掲げてみたものの誰も来てくれないという現実に落ち込むゴッホに、画商として成功していた弟のテオが手を差し伸べます。金銭的援助も含めてゴーギャンを説得してくれたおかげで、二人の共同生活が始まりましたが、それもゴッホの耳切事件で終わることになります。ところが、ゴッホはゴーギャンが去ったあとも共同生活の夢を諦めきれず、ひまわりの作品を数点、模写(セルフコピー)し続けていたのです。
周囲の薦めもあり、ゴッホが精神病院に入院するまで、ひまわりの制作は続きました。切なすぎるゴッホとひまわりの話です。

子どものための「おはなし名画」を読んで、山田五郎先生の「オトナの教養講座」を視聴すると理解がグッと深まるのでお薦めです!

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