ドラゴンボールと西遊記と大唐西域記

鳥山明先生の訃報に衝撃を受けました。代表作の「ドラゴンボール」が世界中で愛され、”MANGA”の国際化に貢献した第一人者と言っても良いでしょう。鳥山先生が世界の文化に与えた影響は計り知れません。

さて、ドラゴンボールの原型がこの絵の僧侶だと言ったら驚くかもしれません。順を追って説明します。

ドラゴンボールのモチーフは16世紀に書かれた中国の古典小説の「西遊記」です。玄奘三蔵(三蔵法師)が孫悟空、猪八戒、沙悟浄たちとともに、中国からインドへ仏典を求めて旅をしながら、様々な試練や困難に立ち向い、成長していく物語です。冒険物語でありながら仏教の教えや神話的要素もあります。

日本でも堺正章(孫悟空)、夏目雅子(三蔵法師)、西田敏行(猪八戒)、岸部四郎(沙悟浄)らが出演した連続テレビドラマが人気を博したことで有名です。勿論、三蔵法師以外は架空のキャラクターです。

この「西遊記」の元となったのが玄奘三蔵が自らの体験を書いた旅行記「大唐西域記」です。玄奘三蔵は7世紀に中国で活躍した僧侶で、仏教を学ぶために一人でインドへ行き、沢山の教えと経典を持ち帰りました。熱風が吹き荒ぶ砂漠をさまよい、天を衝く氷の山を越え、猛獣と毒蛇と盗賊が住む密林を抜けて進んだ17年にも渡る旅の記録は人々の心を捉え、何百年も語り継がれました。

仏教をテーマにした旅行記が神話的要素を持つ冒険物語に、そして孫悟空が仲間たちとともにドラゴンボールを探し求める冒険漫画へと発展したのです。

玄奘三蔵の求道の旅を描いた画家として有名なのが平山郁夫画伯です。画伯は15才の時に広島で被爆し、その肉体的、精神的な後遺症に苦しんでいたときに仏教の経典を携えてシルクロードを一人旅する玄奘三蔵の姿を思い描きました。自分の足でシルクロードを歩き沢山の作品を生み出しながら苦しみを乗り越えたと言います。

上の絵「仏教伝来」は平山画伯が描いたシルクロードを旅する玄奘三蔵です。「御仏の教えを東へ」と願った玄奘も東の果ての国、日本で自分の旅行記が漫画になり、世界中で愛されることになるとは思ってもいなかったでしょう。

大唐西域記の主人公である玄奘三蔵はドラゴンボールにはおらず、ドラゴンボールの主人公の悟空は大唐西域記にはいません。共通するのは困難を乗り越えて成長するという物語と神話的要素としての龍です。中国の伝統文化において、龍は権威や力、幸運を象徴する存在なので大唐西域記にも龍に関する記述があります。

玄奘が辿りついたインドには仏陀が歩んだ聖地と言われる場所が沢山あり、その一つが龍王の岩窟でした。

仏陀が龍を取り押さえたと言われる岩屋です。玄奘はここで仏陀の姿を見たそうです。

その様子を描いたのが平山郁夫の「出現」です。

玄奘三蔵

ドラゴンボールの人気の秘密には東洋の神話的要素が所々に潜んでいるところにもあるのかもしれません。

おはなし名画の「平山郁夫と玄奘三蔵」は「平山郁夫のお釈迦さまの生涯」の続編として作られた2冊目の平山郁夫の画集です。「平山郁夫の生い立ち」と「仏教の伝来と玄奘三蔵」の二部作になっています。
中学時代に被爆を体験し、絶望の底から救いを求め、玄奘への思いをこめて描いた「仏教伝来」「天山南路」その他奈良・薬師寺の壁画も含め38点の絵画で、平山郁夫の歩んだ道と玄奘三蔵の求道の旅を辿っています。

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