受胎告知とは?名画で分かる5つの場面と意味
「受胎告知」は、レオナルド・ダ・ヴィンチやボッティチェリなど、多くの画家が繰り返し描いてきた西洋美術の重要なテーマです。
天使ガブリエルが聖母マリアのもとを訪れ、神の子イエスを身ごもることを告げる場面ですが、画家によってマリアの表情やしぐさ、二人がいる場所は大きく異なります。
この記事では、山田五郎先生の「オトナの教養講座」で紹介された内容をもとに、受胎告知の意味と名画の見方を分かりやすく解説します。
受胎告知とは?
受胎告知とは、天使ガブリエルがマリアの前に現れ、神の子イエスを身ごもり、その母となることを告げた出来事です。
『新約聖書』の「ルカによる福音書」には、天使ガブリエルがマリアに次のように告げたと記されています。
「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる」
ガブリエルは、マリアが男の子を産み、その子をイエスと名付けること、そして、その子が「救い主」と呼ばれることを伝えます。
男性を知らない自分が、どうして子どもを産むことができるのかと尋ねるマリアに、ガブリエルは聖霊の力によって神の子を身ごもるのだと説明しました。そしてマリアは、驚きや不安を抱えながらも、最後には神の意志を受け入れます。
「神の御心のままに」
受胎告知の物語で重要なのは、マリアがただ一方的に運命を与えられたのではなく、戸惑い、問いかけたうえで、自ら神の意志を受け入れたことです。神の意志を受け入れたマリアは、神と人間を結ぶ特別な存在として尊敬されるようになりました。
受胎告知は、イエスの物語の始まりであると同時に、マリア信仰の原点の一つでもあるのです。
受胎告知を構成する5つの場面
山田五郎先生は、受胎告知の物語を5つの場面「挨拶」「困惑」「受胎告知」「説明と質問」「受容」に分けて解説しています。
- 挨拶:天使ガブリエルがマリアの前に現れ、祝福の言葉を伝えます。
- 困惑:突然現れた天使とその言葉に、マリアは驚き、戸惑います。
- 告知:ガブリエルが、マリアは神の子を身ごもり、男の子を産むと告げます。
- 質問と説明:マリアは、なぜそのようなことが起こるのかと尋ね、ガブリエルが聖霊の働きについて説明します。
- 受容:マリアは最後に、神から与えられた運命を受け入れます。
実際の絵画では、この5つの場面すべてを個別に描くのではなく、いくつかの瞬間を一枚の中に重ねて表現することがよくあります。マリアの表情や手の動きを見ると、画家がどの瞬間を描こうとしたのかが分かります。
名画に描かれたマリアの反応
レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』では、ガブリエルの言葉を聞くマリアが、右手を静かに上げています。驚いて身を引いているようにも、天使の言葉を受け入れようとしているようにも見えます。ここでは「告知」と「受容」が描かれているのでしょう。
一方、ロレンツォ・ディ・クレディの『受胎告知』では、ガブリエルがマリアの前にひざまずいて挨拶しています。マリアは胸元に手を当て、突然の出来事に驚いているように見えます。この作品には、天使の「挨拶」と、それを受けたマリアの「困惑」が同時に描かれていると考えられます。


同じ受胎告知でも、画家がどの瞬間に注目するかによって、マリアの表情や姿勢は変わるのです。
「アヴェ・マリア」の祈りは天使の挨拶から始まった
ガブリエルがマリアに語った挨拶は、ラテン語で次のように表されます。
「Ave Maria, gratia plena, Dominus tecum(おめでとう、マリア。恵みに満ちた方。主があなたと共におられる)」
この言葉は、カトリック教会で広く唱えられている「アヴェ・マリアの祈り」のもとになりました。シューベルトやグノーなどが作曲した「アヴェ・マリア」も、この祈りと深く結びついています。
受胎告知は絵画だけでなく、祈りや音楽にも大きな影響を与えてきたのです。
様々な受胎告知
この動画で初めて知ることや初見の作品もあり、興味深かったです。
例えば「ルカによる福音書」に書かれている受胎告知とは違い、「マタイによる福音書」の受胎告知はマリアの婚約者のヨセフに対して夢の中でで行われたそうです。
「ダビデの子ヨセフよ、恐れずにマリアをあなたの妻として迎えなさい。その胎に宿っている子は聖霊によるのです。マリアは男の子を産みます。その名をイエスとつけなさい。この方がご自分の民をその罪からお救いになるのです。」
山田五郎先生が「こっちのほうが筋だと思う」と仰っているのを聞き思わず笑ってしまいました。「夢で告げられた」という点は仏教の「托胎霊夢」と同じです。

ヘンリー・オサワ・タナー(フランスのサロンに入選した初めてのアフリカ系の画家、1859年生まれのアメリカ人)の作品も初見でした。ガブリエルを光のみで神聖な存在を描いた印象的な作品です。マリアの困惑も表情から伝わってきます。
タナーは1859年にアメリカで生まれ、人種差別を避けるためにフランスへ渡って活動しました。パリのサロンで高い評価を受けた、アフリカ系アメリカ人を代表する画家の一人です。

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