【最後の晩餐】レオナルドの挑戦(山田五郎先生のオトナの教養講座)

「最後の晩餐(1495~1498)」はレオナルド・ダ・ヴィンチの代表作の一つで美術史上に残る傑作です。
最後の晩餐とはイエスが十字架に磔にされて処刑される前に、12人の弟子たちと開いた食事会のことです。この時、イエスは自分が処刑されることも、弟子の中に裏切り者がいることも全て知っていました。それでいながら彼らを愛し、人間の原罪を贖うために自分の運命を受け入れました。更に、自分を磔刑に処した人たちにも赦しが施されることを祈りました。どこまでも深い愛です。

レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」

この絵には「この中の一人が私を裏切るだろう」とイエスが言った瞬間の弟子たちのリアクションが描かれています。
イエスの右隣の中性的に描かれているのが(マグダラのマリアとの説もある)ヨハネです。その隣に座って身構えるようにのけぞっているのがユダで、右手にはキリストを売り渡す報酬として受け取ったお金が入った袋を握り締めています。
この絵は修道院の食堂の壁に描かれたものです。修道士たちは食事のたびにキリストと最後の晩餐をともにしているような厳粛な気持ちになったことでしょう。

今回、ご紹介する動画では山田五郎先生がこの絵の作成に使われた技法について詳しく解説しています。私はこの絵を見るたびに保存状態の悪さが気になっていたので、常に興味深かったです。
先生の解説によると、古代ローマ時代からダビンチの時代まで壁画はフレスコという技法を使って描かれていました。ところが、レオナルドはこの技法が嫌いでした。理由は塗り重ねが出来ないことと、筆が遅いとフレスコが乾いてしまうためです。しかも、レオナルドは師匠からこの技法を習っていなかったそうです。
そこで、レオナルドはテンペラ(マヨネーズのようなものに顔料を混ぜたもの)という技法で壁画に挑戦しました。この技法はただでさえ絵具の定着率が悪いのに加え、食事の湯気の影響もあり、レオナルドが生きているうちから絵がはがれ始めていたと言います。
山田五郎先生は「これがレオナルドの凄さだ」と言います。「自分に回ってきた大一番で前例のない冒険をする」ところがアーティストだそうです。

構図を含めたこの絵の素晴らしさの解説は至るところに書かれているし、カトリック系の中学高校に通っていたので「最後の晩餐」から「磔刑」「復活」に至る流れのキリスト教的な意味は理解していますが、技法については詳しく知らなかったので大変勉強になりました。ちなみに、今の「最後の晩餐」は1977年から1999年にかけて修復されたもので、限りなく原画まで復元されています。チャンスがあれば是非、実物を見てみたいものです。

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