名画で語るキリスト教(最後の晩餐)
最後の晩餐もキリスト教絵画に繰り返し登場する主題の一つです。聖書に細かい記述はなく、画家たちがそれぞれのインスピレーションで描かれていますが、いくつか約束事もあります。
食卓を囲むのは13人、キリストと12人の使徒です。キリストが「この中に私を裏切ろうとしている人がいる」とユダの裏切りを予告し、翌日、ユダの手引きにより磔刑に処されるというのがこのシーンの要諦なので、キリストとユダは一目で分かるように描かれます。
大抵の場合、一人だけ光輪がなかったり、机の反対側に座っていたりするのがユダです。
キリストは正面を向いて真ん中に座っていて、一人だけ光輪が大きかったり、色が異なったりします。
最も有名なのがレオナルド・ダ・ビンチの作品です。「この中の一人が私を裏切るだろう」とイエスが言った瞬間の弟子たちのリアクションが描かれています。
驚きの表情を見せる弟子、自らの無罪を訴えかけるような仕草をする弟子、思わず体を乗り出す弟子に混じって、警戒心からか身構えるようなポーズを取っているのがユダ(イエスの右隣の中性的に描かれているヨハネの隣)です。
動きや表情、絵から伝わってくる物語だけでユダを特定しているところにダ・ビンチの凄みを感じます。「奇跡の絵画」とも呼ばれる作品です。
このシーンではユダの裏切りばかりが注目されますが、実際にはキリストのことを知らないと3回も繰り返した「ペトロの否認」を始めとして、身体を張ってでもキリストを守ろうとした弟子がいなかったという意味では、ユダだけがキリストを裏切ったわけではありません。
積極、消極の差はあれ、全ての弟子がキリストを裏切ったのです。そしてキリストはそれを前もって知っていながら、彼らを愛し、人類の原罪を贖うために十字架にかけられるという運命を受け入れました。それどころか、自分を磔刑に処した人たちにも赦しが施されることを祈ったのです。
「キリスト教は愛の宗教である」という言葉が心に沁みます。自らの犠牲も厭わない行動の伴った愛をイエス・キリストは示しているのだと思います。
※私自身はクリスチャンではないので、教義の記載に誤りがあるかもしれません。絵画をより楽しむための参考情報として発信しておりますことをご了承ください。
「おはなし名画」の「レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ」、「マリアさまの生涯」、「イエスの誕生とうわさの壁画 ベノッツォ・ゴッツォリ」、「おはなし名画をよむまえに」の「名画でメリー・クリスマス」の紹介記事も是非ご覧ください。
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