可愛い子には旅をさせよーアダムとイブの失楽園と陰陽太極図が示唆する子育ての要諦とは?

ローマ市内にある世界で一番小さい国、ヴァチカン市国のシスティーナ礼拝堂はいつか訪れてみたい場所の一つです。国を統治しているローマ教皇が住むヴァチカン宮殿の中にあり、天井には旧約聖書の創世記の物語を主題とした「光と闇の分離」「太陽と月と植物の創造」「大地と水の分離」「アダムの創造」「イヴの創造」「原罪と楽園追放」「ノアの燔祭」「大洪水」「ノアの泥酔」などのミケランジェロの作品が描かれています。

太陽、月、植物の創造
原罪と楽園追放

「太陽と月と植物の創造」では太陽と月を作っている神様と植物を作っている後ろ向きの神様が一つの画面に描かれています。「原罪と楽園追放」では中央に「善悪を知る実(禁断の果実)」がなる木があり、左側に原罪の場面が、右側に楽園追放の場面が描かれています。原罪の場面では女性の上半身を持つ蛇がイブに禁断の果実を渡しています。楽園追放の場面で天使に脅されて追いやられているアダムとイブの表情は原罪の場面の彼らとは別人のようです。

生き抜くための12のルール 人生というカオスのための解毒剤の著者、ジョーダン・ピーターソン氏は創世記のような長く語り継がれてきた物語を構成する基本要素に「秩序(order)」と「混沌(chaos)」があると言います。秩序は既知のものであり、規律の象徴でもありますが、行き過ぎれば個性や自由を抑圧する権威主義や画一的で退屈な官僚組織にも通じます。混沌は未知であり、根源や可能性を象徴しますが、危険や闇、破壊などにも通じます。社会的生物である我々の脳はこれらを擬人化して捉える傾向があります。擬人化された秩序は男性であり、擬人化された混沌は女性です。社会の秩序は男性が作り上げたものであり、混沌は全てを生み出す源であるからです。

前頭葉や大脳皮質の機能に関する研究で知られているゴールドバーグ氏は右脳と左脳という脳の構造は新奇さ(novelty)と定型化(routinazation)という現実社会の二元性に適応して発達したものだと述べています。新奇さとは未知であり混沌、定型化とは既知であり秩序です。科学という概念が生まれる前、人々は現実社会を主観的経験を通じて理解し、それは物語として現代に伝わっています。物語の分析から得た知見と最新の脳科学の知見が一致しているのは偶然ではないでしょう。

創世記の中でも特に有名な「アダムとイブと失楽園」の物語を「秩序と混沌」の観点から考えてみます(あらすじを念のために記載します)。
「神は最初にエデンの園を作り、そこにアダムと果物のなる木々を置き、アダムに『果物を好きなだけ食べて良いが、善悪を知る木の実だけは食べてはいけない』と命じたあと、イブを作った。
最初に蛇にそそのかされてイブが、次にアダムがイブに勧められるがままに『善悪を知る木の実』を食べると二人は自意識に目覚め、自分たちが裸であることに気づき、初めて羞恥心を感じる。
異変に気付いた神によってアダムとイブはエデンの園から追放され、それ以来、人類は原罪を追うことになった。」

この物語はエデンの園が秩序を、外界が混沌を象徴しています。ではなぜ神は蛇がエデンの園に忍び込むのを許したのでしょうか?この疑問に答えるのが古代東洋の思想を図に表した「陰陽太極図」です。

この図では黒と白の二匹の蛇が絡み合っています。黒が陰、白が陽、陰は女性、陽は男性です。これを物語の要素に当てはめると、女性である陰は混沌、男性である陽は秩序ということになります。

黒蛇の中の白い点、白蛇の中の黒い点は変容の可能性を表しています。これは秩序が崩壊する、あるいは混沌から新しい秩序が生まれる可能性を示唆しています。この黒い点がエデンの園に現れる蛇です。アダムとイブは蛇のせいでエデンの園を追われますが、同時に善悪を知り、自意識に目覚めました。人類は原罪を負いますが、他の動物とは違う進化を遂げることが出来たのです。同様に外界(混沌)に追放されたアダムとイブは(後のイエスとマリア同様に)黒い蛇の中の白い点です。

「原罪と楽園追放」に描かれた蛇が女性の上半身を持っているのも面白いですね。陰と陽、つまり秩序と混沌は片方だけでは存在しえず、絡み合って、あるいは混然一体となり存在しているのです。エデンの園に蛇が現れるのは必然だったのです。

創世記を陰陽論で解釈することで、陰陽論への理解も深まります。例えば、中庸の道(陰と陽の中間の道)は秩序と混沌のバランスと考えられます。片足を秩序(既知)にしっかりと乗せながら、もう一つの足を混沌(未知)に踏み込むことで既知の領域を広げることが成長につながるのです。

子育てにも応用できます。創世記あるいは陰陽論から明らかなように、子どもにとって完全に安全な環境を作ることは不可能です。あらゆる問題を取り除こうとする過保護な親は親自身が子どもにとっての問題となります。完全な放任主義も良くありません。困難を克服し、自分の可能性を追求しながら成長出来る強い子どもに育てるためには秩序と混沌のバランスを図ること、つまり中庸の道が大切です。

創世記の物語を読み直したり、絵画を鑑賞したりすることで新しい気づきがあるかもしれません。
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